近所に住む旧友から、「東大阪市の国保条例がおかしいと思うが、専門家の意見を聞きたい」と電話がありました。

「国保料が高過ぎる。払いたくても払えない」という声はよく聞きますが、「国保条例に問題がある」という鋭い指摘は想定外でした。

▼友人の説はこうです。

東大阪市国保条例第11条によれば、国保の所得割額は「地方税法第三百十四条の二第一項に規定する総所得及び…」とされているが、地方税法のこの条文は「所得控除」についての規定であるので、そこに列挙されている控除(人的控除=扶養控除、社会保険料控除など)を差し引いた後のものが、「総所得」ではないのか。

▼少し長くなりますが、次の条文をご覧ください。

「前号の所得割額は、第二号の所得割総額を地方税法第三百十四条の二第一項に規定する総所得金額及び山林所得金額並びに他の所得と区分して計算される所得の金額の合計額から同条第二項の規定による控除をした後の総所得金額及び山林所得金額並びに他の所得と区分して計算される所得の金額の合計額(以下「基礎控除後の総所得金額等」という。)に按分して算定するものであること。

ただし、当該市町村における被保険者の所得の分布状況その他の事情に照らし、前号、この号本文、第七号本文、第八号及び第九号の規定に基づき基礎賦課額を算定するものとしたならば、当該基礎賦課額が第十号の規定に基づき定められる当該基礎賦課額の限度額(第七号において「基礎賦課限度額」という。) を上回ることが確実であると見込まれる場合には、厚生労働省令で定めるところにより、基礎控除後の総所得金額等を補正するものとする。」

上記は国民健康保険法施行令附則第29条の7第2項第4号(昭和33年制定)の規定です。

▼おわかりのように、東大阪市国保条例(他の市町村の国保条例も)はこの法令にならって定められています。

総所得金額(地方税法第三百十四条の二第一項)-基礎控除(同条第二項)=賦課標準所得 と「読め!」ということです。

「旧ただし書き方式」と呼ばれている算定法の根拠となっているのが、「ただし・・・基礎控除後の総所得金額等を補正するものとする」の規定です。

10年位前に国保料値下げの運動の中で、「旧ただし書き方式」を適用して白色(青色)専従者控除(給与)を認めた自治体もありましたが、人的控除は要求にとどまっており、実現していません。

平成24年の地方税法改正を踏まえて、市町村国保の所得割の算定方式は「旧ただし書き方式」に統一されています。

▼友人の疑問は、「国保料の計算のもとになる総所得に対する控除が基礎控除の33万円(地方税法)だけというのがおかしい。33万円で1年間生活していけるというのか」というところに端を発しています。

33万円÷365日=約904円にすぎず、動物園のゴリラやライオンのエサ代にも遠く及ばないことが以前から指摘されています。

国民健康保険の加入者は、かつての自営業者中心から、年金生活者や非正規雇用の労働者が大半を占めるように変化してきています。

これ以上、国保料で苦しむ人たちを生み出さないためにも、基礎控除を引き上げるか、算定方式を見直すことが求められていると考えます。