かわちのタイムスNo.62(20230401) ← クリックすると画像が見られます。

【1面】

「働き方改革」問答 

36協定・特別条項が大切

若手社長 売上が少し回復してきて残業が増えそうです。社員に残業をさせるには就業規則がいりますね。

社労士 それだけではなく、「労使協定」が必要です。

社 長 36(さぶろく)協定とかいうやつですね。

社労士 そうそう、時間外労働・休日労働をするための労使協定で、労働基準監督署に出すものです。

社 長 残業をさせられる時間は決まっているのですか。

社労士 「働き方改革」で時間外労働の上限は月45時間年360時間になり、罰則も付きました。

社 長 うちは年度末が忙しいのですけど。

社労士 特別条項(下記)を定めることができます。ただし、残業代の5割増し(問答①参照)を避けるためにも、「時間外労働+休日労働≦60時間」がおすすめです。

社 長 労働者代表の選出はどうやってすれば?

社労士 「社長の指名」ではなく投票・挙手・話し合い・持ち回り決議など「民主的方法」で選ぶことです。

社 長 協定を毎年作って労基署に提出するのは大変ですね。

社労士 協定の有効期間が一年なので。電子申請もできますよ。

社 長 では、社労士さんにお任せしていいんですね。

社労士 労働者代表の選出をよろしく。それだけは「ろうし」ようもないので。

 

特別条項(年6ヵ月まで)による上限時間

① 年720時間以内の時間外労働

② 時間外労働+休日労働で単月100時間未満

③ 同じく合計で2~6ヵ月平均80時間以内

 

      またまたアップ雇用保険料率

事業の種類 2022年10月~ 2023年4月~
一般 13.5/ 1000

労5 ・ 事8.5

15.5/ 1000

6 ・ 事9.5

農林水産

清酒製造

15.5/ 1000

労6 ・ 事9.5

17.5/ 1000

7 ・ 事10.5

建設 16.5/ 1000

労6 ・ 事10.5

18.5/ 1000

7 ・ 事11.5

 

::労働トラブル解決帖::

あっせん・調停の巻

【あっせん事例】

派遣元X社の派遣労働者Aは、派遣先Y社から「戦力にならない」と5日めに通告された。

X社は別の派遣先を紹介しようとしたが、Aがモラルに欠ける行動を取ることから、他に紹介することもできず、そのまま「雇止め」となった。

Aは「雇止めは無効だ。慰謝料を払え」と要求して、労働局にあっせんを申し立てた。

あっせん委員はX社の主張を認めつつも、金銭による和解を勧め、要求額の1/4を支払うことで和解が成立した。

【調停事例】

Z社に3年間勤務した労働者Bは、「妊娠・出産したことを理由に解雇された(マタニティハラスメント)。生活費を払ってほしい」と労働局均等部に調停を申し立てた。

Z社は「Bが自ら申し出た自己都合退職で、職場の誰もがそのことを知っている」と反論した。

調停委員は「Bは育児休業給付の半年分を要求しており、生活に困っている」と金銭和解を勧め、要求額の2/3の解決金で和解した。

【まとめ】

何れの事例も、法律論ではなく「金銭相場」による和解である。労使双方とも紛争を長引かせたくないと考えたので、即日和解に至った。

※このコーナーは特定社労士が補佐人として参加した事例をモデルにしたフィクションです。

 

【2面】

3本立ては続くよ~どこまでも?

処遇加算は全部取るしかない!

令和5年度の処遇改善加算計画届の提出期限(4月15日)を目前に、3月22日・23日に3回の説明会を開催 し、14社が出席されました。

説明会は出席者の自己紹介から始まり、かわちの社労士が約1時間説明し、その後質疑応答と進みました。

導入編は介護職場で処遇改善加算が必要とされる背景、介護保険・処遇改善の歴史、処遇改善加算の特徴などをおさらい。「処遇改善支援一時金で介護職員の賃金は上昇したのか」にもふれました。

実務編では3本立てになった処遇改善加算の取得から計画届・実績報告、就業規則・賃金規程の整備と実地指導など実例をあげて説明しました。

初めて参加された方の疑問にベテランの事業主がアドバイスするなど、参加者同士の交流にもなりました。

≪実務のポイント≫

○3本立ての制度は当分続くので全部取るしかない

○就業規則・賃金規程などは実地指導に備えて整備

○厚労省は計画届を「簡素化した」というが「簡単」にはなっていない

3月23日午前の部

 

だから映画はおもしろい vol.52

深夜のドッジボール

深宵閃避球

             (2022年、香港)

●記録的な暖かさで3月中旬に桜が開花。それでも「花より映画」の筆者は第18回大阪アジアン映画祭に2日間参加して4作品を観賞しました。

●香港は「カンフー」ブームなど、アジアの映画界をリードしてきました。人権問題を抱えながらも主要産業として映画に注力している香港の現在を知ることができました。

●社会福祉士のヨンは家に帰りたくない事情を抱える少女たちのために公立体育館の深夜使用枠を立ち上げたが、閉鎖の危機に陥る。毎晩集まってくる少女たちでチームを結成し、体育館の存続をかけてドッジボール大会に出場することになり、同級生のラウにコーチを依頼する。ラウも訳ありの人生を送っているが、独特のコーチングで問題を抱える少女たちを成長させていく。

●ドッジボールが欧米から日本に伝わり、そこからアジアに広まったことを知りました。筆者は若かりし頃、学童保育の指導員として小学生のドッジボールチームを率いて、大阪市内の大会で優勝した経験があります。その当時は、ドッジボールの醍醐味である「ひらりとかわす」ことより、「相手をいかに倒すか」にこだわりすぎていたように思います。

●上映後の監督・女優への質問タイム。日本人女性から「この映画がどうしても見たくてコロナ禍に香港まで行きました。観賞は今日が7回目です」と聞いてビックリ。改めて「好き」に勝るものなどないと感じました。毎回ファンを大いに楽しませてくれる映画際のさらなる発展を期待します。

 

編集後記

▼自主研究会の集まりで『ブラック企業』の著者・今野晴貴さんの講演を企画しました。「若者を使い潰す」のではなく育てることのできる社会へ、社労士にできることがあるはずです。

▼ヒノキ花粉のピークを迎え、目と鼻に強烈なダメージを受けています。コロナによる規制がなくとも「マスクを外す」という選択は当分できそうもありません。