「かわちのタイムス」第17号で既報のとおり、今年の6月1日から、「障害年金の認定基準」が一部改正されました。「改正」されたのは①音声又は言語機能の障害②腎疾患による障害③排泄機能の障害④聴覚の障害です。

④聴覚の障害の改正は「障害年金の請求にあたって、他覚的聴力検査をおこなう」というもので、ゴーストライターで有名になった作曲家のS河内氏(かわちの社労士とは無関係)の事件が引き金であることは明白です。本来あるべき基準だったということでしょう。

③排泄機能の障害については、人工肛門造設と尿路変更術の障害認定日が、「造設・手術の日」から「造設・手術の日から6ヵ月後」に「見直し」されました。

理由は、人工肛門造設などが一時的に利用される場合があるため、6ヵ月間様子を見てから認定しようというものです。

問題は、永続的に人工肛門などを使用する人が、障害認定を受ける場合も、6ヵ月間待たされることです。つまり、受給できる障害年金(額)が6ヵ月分減らされるのです。

◆これから障害年金を受けようとする人の権利はどうなる?

これは、これから障害年金を受けようとする人にとって大変な「不利益変更」になると考えます。

この「改正」が行なわれた経過は、すでに障害年金を受給している人の障害の程度が人工肛門造設などで増進した場合に、従来1年かかっていた「額の改定請求」を待機期間なしで請求できるように改正したことから、「一時的か永続的か」を見分ける必要ができたことによります。

「額の改定請求」の改正のもとになったのは、「障害年金の額改定請求に関する検討会」の意見です。この検討会は厚生労働省が参集した、各科の医師などの有識者によるもので、2013年9~11月に開催されました。

「障害年金の額改定請求に関する検討会」報告書に、人口肛門を造設した場合などの障害認定を行う時期を6ヵ月経過後に見直すことが提言されています。

◆「検討会」報告書の指摘する留意点はどこへ行った?

しかし、「報告書」の「2.検討に当たっての考え方」には、

「なお、今回の検討は、すでに障害年金が受給されている方(2級または3級)に対し、障害の程度が増進したことが明らかである場合に1年間の待機期間について例外規定を設け、前倒しして額の改定を請求できる範囲を定めるものであり、

・障害年金を受給できる範囲そのものを定めるような趣旨ではない。

(中略)

という点に留意が必要である。制度の実施に当たっても障害年金受給権者に誤解が生じないよう、十分に周知するべきである」と明記されています。

今回の「改正」は、この留意点をあえて無視していると思えてなりません。

「額の改定請求」の改正は障害年金受給者にとって朗報でしたが、一方で不利益を被る人が生まれる今回の様な「改正」?は看過できません。